日本幼児保育史
底 本
『日本幼児保育史』全6巻(フレーベル館、1968-75年)
特 色
江戸期〜戦後期まで、日本の幼児保育の歴史を貴重な資料と共に俯瞰する!
岡田正章、遠藤明子、木原溥子、宍戸健夫、長玲子、津守真、水野浩志、村山貞雄など保育研究の先駆者たちによって構成される執筆陣!
資料の少ない戦時中の幼児保育の実態をアンケートなどの貴重な調査を交えて明らかにする!
総約一、九〇〇頁、巻末に便利な索引つき!
第六巻には、九十七頁におよぶ「日本幼児保育史年表」を収録!
刊行のことば
本書について(序文より)
わが国に幼稚園がはじめてできたのは明治九年であり、現在のお茶の水女子大学附属幼稚園の前身で当時の東京女子師範学校附属幼稚園がその最初のものであった。それ以来すでに九十二年(本書第一巻刊行当時)を経過している。また、今日の保育所すなわち古く託児所と称せられていた保育施設がはじめてできたのは、明治二十三年であり、新潟市の家塾静修学校の附属施設として赤沢鐘美の開いたものが最初のものであった。したがって託児所もその創設以来すでに七十八年の歳月を経ており、わが国の保育施設はすでにかなりの年月にわたる歴史を持っているわけである。
しかしわが国の保育施設の発達に関する研究文献は、かつて昭和九年に出版された倉橋・新庄共著の「日本幼稚園史」があるのみで、それも東京女子師範学校附属幼稚園を中心とした沿革史的要素が強く、全国的な幼稚園の客観的資料に基づく発達史は殆んど皆無であった。ところが第二次大戦により相当の貴重資料が散逸してしまったので、何とか保育学会として客観的資料に基づく日本幼児保育史を早急にまとめることの必要が痛感された。
日本保育学会ではこのような状況にあるわが国の保育史の研究をすすめるために、すでに昭和三十一年以来保育史共同研究委員会を組織し、研究を行なって来た。その成果の一部はすでに昭和三十二年の第十回大会以来、大会において発表し、また「幼児の教育」誌上に発表するとともに「明治保育史年表」を刊行した。これらの研究は七名の共同研究小委員によって精力的に進められてきたものである。
これらの保育史研究の成果は、江戸時代から明治、大正、昭和の各年代にわたっているが、今回その成果をまとめて、日本幼児保育史として刊行することとなった。これらの成果をまとめるのに長い間にわたって苦心された小委員会の諸氏の労を多とするとともに、この研究成果がわが国の保育研究の上に多大の貢献をすることができることを心から喜びたい。
(本書第一巻序文より抜粋。日本保育学会会長〔当時〕・山下俊郎)
推薦のことば
先人の歩みに学び、今の保育制度や保育実践のルーツをさぐる
森上 史朗
(子どもと保育総合研究所代表、元日本保育学会副会長)
今回、復刻出版される『日本幼児保育史』は二つの大きな特色をもつ。その一つは、本書がわが国最初の総合的な保育史であるという点である。本書以前には、幼稚園もしくは、保育所に限定された保育史は存在していたが、その両者を総括的に扱ったものは皆無であった。日本保育学会は一九五六(昭和三十一)年に保育史共同研究委員会を組織し、取り組みを開始した。そして研究委員が各地に赴き、江戸時代から明治、大正、昭和初期にかけての様々な新資料を発掘し、あるいは関係者への詳細なヒヤリングを行うなどして、多くの新しい史実を明らかにした。これによってはじめてわが国の幼稚園と保育所(その前身である託児・保育施設も含めて)の歩みの全貌が明らかとなったのである。
第二の特色は、類書の多くが保育の全国的な歩みに偏っているのに対して、本書では保育の地方史、さらには先駆的な園の実践なども紹介されている点である。これによって、地域により幼稚園と保育所が偏在している経緯や、現在、各地で行われている実践がどのようなルーツに支えられているかなどを理解することが可能になる。保育の研究者はもちろん保育現場の実践者にも座右に備え、活用されることを勧めたい。







